商品の説明
1930年(昭和5年)初版。教育不毛が叫ばれるなか、牧口常三郎初代会長が、自身の30余年の学校教育の経験と思索に基づき樹立した、独創的な教育学の書である。
その教育学説は、本書の緒言で著者が「古代の傭兵のように、おのが領分である教育社会にも一顧もされないような旧来の教育学を棄て、新しい教育学を実証的、科学的に蘇生せしめて、実際の教育生活に密接なる関係を保たせようとしたのが、この創価教育学である」と述べているように、従来の教育学が、欧米の教育学説の翻訳であり、学者の机上の教育理論であったのに対して、牧口会長自ら三十余年の学校教育における日々の実践、反省、思索の累積による記録をもとにして体系化し、集大成した新しいものであった。
その内容は「人生の目的たる価値を創造しうる人材を養成する方法の知識体系」といえる。
従来の教育の原論であるべき教育学が実際に役立たない根本的欠陥は、理論が先にあって実証的でないところにある。教育学説が観念的哲学理論で構成されていて、実証的に構成されていないからである。
これに対して創価教育学説は、単なる理論体系を示すのみでなく、具体的な教育改革案、独特の指導法等、科学的教育学として確立されている。あくまでも、実際教育の経験から出発し、そこに存在する幾多の原理を抽出し、法則をつかみ、それを実際教育に適用させていくという、かつてみられない新しい教育理論であった。
創価教育学説は(1)生活の学問化(2)学問の生活化(3)進化論的考察(4)真理の批判的考察、の四つの過程から樹立され、日常の生活のなかから生まれた応用科学として画期的なものである。実際の教育事実の要素を分析して考察を加え、教育学の研究分野を整理している。
この学説においては、創価教育学の理念に立ち、教育の目的から教育界を観察して、改善すべき教育の目標を示している。その骨子は教育制度と教育方法の改革である。
なかんずく混迷する教育界の刷新のため次の二つが殊に大事であるとする。
第一は教師は教育技術者であるとの論である。ちょうど医師の治療術をもって病人を治すように、教師は教育技術をもって児童を指導、教育する技術者でなければならない。そのためには、教育技術と、その基礎をなす教育学の理解が必要となる。
第二は抜本的な教育制度の改革案である。たとえば半日学校制度がそれである。その概要は、一般的普通教育とともに、専門的職業教育を小学校時代よりすでに並行して施すかわりに、学生生活を単に青少年の時代に限定せずに、成年期まで延長しようというものである。
以上のように、多岐にわたる教育制度の改革、教員養成制度の改革、国立教育研究所の改革、教育行政監督権の問題に検討を加えている。
著者と親交のあった新渡戸稲造氏は、本書について「現代人がその誕生をひさしく待望せし名著」と述べている。
【目次】
第四編 教育改造論
第一章 教育改造政策の要諦
第一節 教育改造策の価値
第二節 所謂思想善導の本末と緩急
第三節 教育の重要性並びに其の特殊性
第二章 教育機関の体系及び其の進化論的考察
第一節 教育機関の構成と其の整理
第二節 教育機関の進化論的考察
第三章 教師即教育技師論
第一節 教師の本務の進化論的考察
第二節 教員気質と其の階級
第三節 教師の必要資格は如何
第四節 教師の理想としてのペスタロッチ
第四章 小学校長登用試験制度論
第一節 無標準なる小学校長詮衡の弊害
第二節 校長試験制度の内容
第三節 誰が校長を評価するか
第五章 教員待遇改革論
第一節 物質的待遇の改善
第二節 精神的待遇の改善
第三節 教育者優遇の精神如何
第六章(甲) 師範教育改造論
第一節 文部省の師範教育改善案に就いて
第二節 師範教育の三方面の並行
第三節 師範教育の階級認識
第四節 師範教育の改革方針
第五節 熟練教師の養成と徒弟制度
第六節 独、米、最近の師範制度改革
第六章(乙) 国立教育研究所論
第一節 教育研究所の価
値
第二節 国立的教育研究所設立案
第三節 似而非教員研究機関
第七章 教育統制機関改革論
第一節 教育行政監督権の限界如何
第二節 視学制度廃止論
第三節 教育参謀本部論
第八章 教権確立論
第一節 学校自治権確立の急務
第二節 母性覚醒の時機
第三節 保護者会の改造、利導の問題
第四節 教育争議調停機関論
第九章 学制改革案論
第一節 文部省の学制改革案の反響に就いて
第二節 現行制度の欠陥に対する再認識
第三節 学制改革の方針=範囲及び程度
第四節 学制改革の目標並びに要領
第五節 学制改革の立案者は誰ぞ
第六節 学校は官営か民営か
第十章 半日学校制度論
第一節 半日学校問題の概要
第二節 半日学校制度の価値
第三節 半日学校の実例と成績
第四節 所謂実業教育反対
第五節 青年教育時期延長の要求と半日学校
第六節 少年労働法との関係
第七節 ロシアの新教育法に対するケラーマン氏の批評の批評